今日もワインを飲んでます そして思いついたことを書きつづる

テューリンゲン紀行5(Mühlhausen)

プレゼント専門シエル・エ・ヴァンの店長・ハヤシです。
今はなきドイツ民主共和国のテューリンゲンを横断した思い出の最終回です。現在の州都エアフルトから離れて、暗い村と森の中を疾走します。

 

 

エアフルトの街が暗闇に包まれ、西側世界のようなネオンも輝いていない街は、思った以上に暗い印象をもちました。
今夜はこの街に宿泊しようかとも思いましたが、セヴェリ教会を離れてから再び迷子状態になってしまったので、とりあえず市街地を脱出することにしました。郊外のガストホフ(Gasthof)が東ドイツにあるかどうかわかりませんが、何の情報も持たない日本人が、暗い街中で宿探しをするのは辛いことだと感じていました。クルマで郊外で出れば、最悪、車中泊も可能となります。
取り合えず、ライプツィヒ(Leipzig)方面へ行こうかと思い、北東方向への道路を探しました。ところが、ここでも案内表示板が暗く、一瞬で確認することに失敗しました。暗いだけでなく、見慣れない地名が多かったことが原因です。

 

アウトバーンには宿泊施設がないので、国道などの幹線に行こうとしていたのもありますが、それ以上にアウトバーンの表示そのものについても見かけることがなく、結局どこをどう走っているのか分からないままでした。
計画性もなく、慣れない東ドイツに入国したので、開き直って走りやすい道路を走ることにしました。その結果、どうやらノルドパーク方面の北側へと進んでいるようで、行きたい方向とはズレていることに気づきました。しかし、修正するのも大変なので、そのまま北へ行き、4号線へと合流しました。ガソリンもどこかで入れようかと思いましたが、東ドイツにまともなガソリンスタンドはなく、あっても、いわゆる「ハイオク」に相当するオクタン価のものもなさそうでした。
一度、西側に戻らないとならないかもと考えるようになり、国境をさがすことにしました。

 

東西を自由に行き来できるようになったのは、つい最近のことで、東西冷戦時代には厳しい監視状態だった国境は、当然ながら案内表示はありません。
仕方なく西方向の国道でカッセル(Kassel)方面へと行こうと考えました。
小さな集落に入るとアスファルトから石畳になり、しかもかなり狭い道路になります。周囲は暗い森が続き、アップダウンも随所にあります。寂しい道です。もし、こんな場所でガス欠になってしまったらシャレになりません。
小さな村に宿泊施設も見つけましたが、宿の人に話をきくと営業していない、という答えでした。実際には営業していないのではなく、客がいないので、夜になってから新たな客を迎えるのが面倒という印象でした。いかにも共産圏らしい反応で、見かけない日本人についても興味はないようでした。

 

空腹も感じてきたものの、国道に沿って現れる村や町には、食事を提供してくれそうな店も見かけません。明るい時間帯であれば、あるいは探し当てることができるのかもしれませんが、西側のような商業的な意識のないレストランは、存在そのものが消失しているようです。何も知らない西の旅人が、消え去った空間から見つけるのは難易度が高すぎました。
パン屋や軽食を扱う店舗もありません。当然ながらコンビニもありません。
ここにきて、何ともいえない寂寥感だけでなく、ある種の危機感も感じてきました。ただ、この途方にくれた状態は、決して不快なものではありませんでした。

 

30年も前のことなので、記憶が定かではないものの、おそらくミュールハウゼン(Mühlhausen)という町だと思いますが、ここで国道を左折することになりました。
少し走ると、路上に屋台が出ていました。ヴルストやパンの屋台です。街灯もないような寂しい国道に屋台があることが奇跡に感じました。
慌ててクルマを停め、近くの空き地に駐車してから屋台へ向かいました。
先客は父と小さな娘の親子が一組だけでした。小さな女の子は、謎の東洋人が現れたことに少し驚いたようでしたが、父親は特に反応はありませんでした。
屋台の親父さんは気さくな人で、西ドイツの人でした。どうやら通貨統合されたことで、ここまで来て営業しているようでした。ただ、物価が東側は安いので、半分はボランティアみたいなものだと言っていました。ついでに国境の位置も教えてもらいました。
クルマに持ち帰り、ようやく空腹を満たし、少しだけですが仮眠もしました。ガソリンは残り少ないものの、屋台の親父さんの話を信じれば、カッセルまでは持たないとしても、西側のガソリンスタンドまでは問題ないと判断しました。

 

夜明け前に再び出発しました。
屋台はいつの間にか姿を消しています。
ミュールハウゼンから西に向かうと、そこは山岳部でした。道路は何とか舗装されていますが、真っ暗な山の中を走るのでスリルはあります。しかも国境の表示がなく、本当にこの道で正しいのかどうかが分かりません。
ようやく、怪しく輝く光が何もない山間部に突然現れました。ダムを照らしているような光景でしたが、近づくと国境の検問所でした。無人でした。何とも奇妙な印象を持ちます。
こうしてテューリンゲンから離れ、西ドイツ国内に入ったわけですが、景色が変わるわけもなく、相変わらず山の中でした。

 

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