今日もワインを飲んでます そして思いついたことを書きつづる

キリストの血入門 10

プレゼント専門シエル・エ・ヴァンの店長・ハヤシです。
ワインが「キリストの血」であることから、キリスト教について勝手に語っていく第10回です。今回もワイン屋の店長が宗教学者になって語りますので、誤りがあっても許してください。

 

 

前回は、キリスト教の国教化後の教父哲学について語りました。アウグスティヌスでした。今回はアウグスティヌスのその後の影響について触れていきます。

 

アウグスティヌスの思想は、キリスト教共同体としての「教会」と世俗国家を弁別することで、キリスト教の優位性を示しました。このことからローマ教会の権威が確立されていくことに繋がり、普遍性の有力な根拠でもありました。
また、個人的な部分を題材にした『告白』により、個人主義的な信仰とは、『神の国』による共同体としての教会でさえ世俗的であるとしました。これらの影響は後世に大きな影響を与えました。

 

宗教改革への影響にも大きく与えましたが、その点は後に譲るとして、今回は自由意志(freier Wille)に関して絞ってみます。
自分の意志が自分の自由になるという仮説ですが、人間が自己の判断に対してコントロールすることができるかどうかが問題になります。
自身の意志によって、行為が発生し、最後に結果が生まれる、という一連の流れです。思ったとおりに行動していることは、自身意志から行動に移ることであり、これだけで論争をするものではありません。
どのような意志か、それが自由か否かについて、直接的に問うことで、意志の成立過程が重要となります。自由意志の問題とは、自由と因果との関係であって、ここに宗教的、哲学的、倫理的、さらに科学的原理が絡み合っています。
このようなアウグスティヌスの自由意志と信仰との問題が、後のアルトゥル・ショーペンハウアー(Arthur Schopenhauer)やフリードリヒ・ニーチェ( Friedrich Wilhelm Nietzsche)にまで影響を与えているのです。
アウグスティヌスは人間の意志を非常に無力なものとみなしています。そのため、善を成すには、神の恩寵なしにはできないとしました。これこそ、若き日の非合法な結婚に関連する性的に放縦な生活を送ったことへの悔悟が背景になっているといえます。

 

ショーペンハウアーは、カント哲学を受け継いでいるとしながらも、世界を表象とみなし、その根底にあるものを「盲目的な生存意志」としました。
この「意志」があるゆえ、経験的な事象はすべて非合理であることになります。人間が生活していくには、意志は絶えず他の意志によって阻まれてしまい、生きることは同時に苦を意味することになります。この苦から脱出するためには、意志を諦観するか、絶滅させることしかないと説きました。
いわゆる厭世観的思想です。
アウグスティヌスの自由意志という捉え方との比較が興味深い内容です。
これは19世紀後半に流行したもので、それを広めたのがニーチェです。
ニーチェの『悲劇の誕生(Die Geburt der Tragödie)』は、ショーペンハウアーの意志と表象から成る世界観が大前提になっています。彼は、古代ギリシアのアポロンに理性を象徴させ、ディオニュソスに情動を象徴させ、その上で、ディオニュソス的根底には、ルター、カント、バッハ、ベートーベン、ドイツ精神がつながるとしました。
さらに『悲劇の誕生』第16節では、ショーペンハウアーの音楽観を引用し、全面的帰依を表明していたのです。

 

自由意志とは別に、意外なことにフランク王国のカール大帝も、アウグスティヌスの著作を好んでいたようです。
さらに中世には、カトリックを代表する神学者のトマス・アクィナス(Thomas Aquinas)もアウグスティヌスから大きな影響を受けていました。彼の代表作といえば『神学大全』で、スコラ学の代表的神学者であり、カトリック教会と聖公会では聖人になっています。
トマスは、キリスト教思想に古代ギリシア哲学を統合し、総合的な体系を構築しました。その古代ギリシア哲学がアリストテレスで、この統合に目を見張るものがありました。
アウグスティヌス以来のネオプラトニズムの影響を残しながら、哲学ではプラトンからアリストテレスに変え、神学と哲学の関係を整理しました。これにより、神を中心とすることと、人間を中心とすることの、相対立する概念について、統合を図ったことになります。
このトマスの思想は、トマス主義として受け継がれていきました。その原点こそがアウグスティヌスといえなくもありません。

 

アウグスティヌスはカトリック教会で最も重要視されてきた人物です。
その反面で、ルターやカルヴァンなどによれば、アウグスティヌスに対する誤謬を誤って利用してきたという態度もあり、アウグスティヌスの論説については、プロテスタントとの各派に温度差もあります。この点は宗教改革のときに改めたいと思います。

 

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