考えてみましょう。
ワインを産み出す芸術家は、12ヵ月に一度のチャンスしかありません。
最初の11ヵ月はヴィンテージの下準備。そして収穫日をいつにするかという、一年を通じて最も重要な決定を下します。ブドウを摘み取ってしまったが最後、後戻りはできません。果実は熟しすぎていることもあるでしょうし、未熟な場合もあるでしょう。そのため、それを完璧に見極めるのが彼らの目標ですが、これは容易なことではありません。
特に、自然の気まぐれを(天候)を考慮すれば尚更大変です。
こうした生産者は一年中、事実上一日も欠かさずに、畑もしくは醸造所で働いています。
彼らはセラーに寝かされている新酒の管理人なのです。
ブドウ樹を刈り込み、剪定し、畑の健康と収穫量と、全体的なバランスに気を配る畑の管理人でもあるのです。
ワインの生産者は11ヵ月間もの労働の後、10~20日間の収穫によってしか、自分の価値を示すチャンスがないのです。
これらの生産者たちは、男女にかかわらず、重労働に対するうらやましいほどの情熱と、激しさと、肩入れを持っています。彼らは妥協を知らず、特別な畑を管理しているのだという責任を自覚しています。
人間に可能な限り最も自然に、妥協せず、人の手を加えずに自分たちの畑、ヴィンテージ、そしてブドウ品種を表現させ、それを消費者に届けることが、彼らの唯一の目的です。偉大なワインの背後にある生産者の大多数は、母なる自然のつつましい奉仕者であります。
こういった生産者は、ワインはビジネスではなく、人間と自然と土地とを結びつける文化であるという概念に執着しています。
ワインは最上の文明を体現したものであると。
そして、西洋のすべての主要文明の重要な要素でもあったように、ワインを飲む喜びを分かち合うことで様々な人々が一つにまとまることができることでしょう。
コメントはありません
コメント