プレゼント専門シエル・エ・ヴァンの店長・ハヤシです。
今回はフレンチパラドックス(French paradox)について勝手に語ります。
フレンチパラドックスは、フランスのボルドー大学の科学者・セルジュ・ルノーの造語です。
どのようなパラドックスかというと、フランス人は他の国の人たちと比較して、喫煙率が高く、飽和脂肪酸の多い食事を摂取する傾向が強いにもかかわらず、冠状動脈性心臓病に罹患することが少ない、という逆説的なことをいいます。
Wikipediaで調べてみると、以下のような「状況説明」が掲載されていました。
フランス人は、アメリカ人に比較して4倍量のバター、60%増しのチーズ、3倍近い量の豚肉を多く食べている。フランス人は、総脂肪摂取171g/日でアメリカ人の157g/日をわずかに上回っている程度であるが、フランス人ははるかに多くの飽和脂肪酸を消費している。
それは、アメリカ人が遥かに大きな割合を植物油の形で、脂肪を消費しており、その中ほとんどのは大豆油であるからである。しかし、英国心臓財団の1999年からのデータによると、35-74歳の男性の虚血性心疾患による死亡率は、アメリカ合衆国では10万人あたり115人で、フランスでは10万人あたり83人のみである。
このような疫学的パラドックスは、赤ワインが原因であるとしました。
フランス人が赤ワイン消費量が多いことで、心臓疾患の発生率が減少していると推定したのです。アメリカのCBS番組でも取り上げられ、大きな反響を呼びました。
これ以降、赤ワインは健康的な飲料であるイメージが出来上がりました。
ワインに含まれるポリフェノールの「活性酸素除去作用(抗酸化作用)」により、パラドックスができあがったというのは、あくまで説ではありましたが、かなり説得力があったようです。
活性酸素は、老化や動脈硬化などの疾患を引き起こす要因になり、これを除去する代表的な物質がポリフェノールであり、これは赤ワインに多く含まれ、それをフランス人は大量に飲む、その結果、心臓病の予防や改善に繋がる、という考え方です。確かに説得力はありそうです。
この説に対して、アメリカのジョンズ・ホプキンス大学医学部の研究者たちによる「Jama Internal Medicine」で発表された研究結果については、あまり注目されていないようです。
彼らは、イタリアのキャンティ地方在住の約800人を実験の対象としました。
この地域はイタリアを代表するワイン産地で、最低でも3世代前まで遡っても赤ワインを飲む習慣がある人たちです。また、実験対象者はサプリメントを摂取しない人に限定しました。
この研究は1998年から2009年まで継続し、対象地域の60歳以上の人々の尿の中のレスヴェラトロールの量を毎日検査していきました。
研究観察期間が長いため、実験対象の人たちのなかには亡くなったり、病気になったりした人もいました。
その死亡や発病の確率は、赤ワインを多く飲む地域の人たちと比較して、何ら特徴的な結果を得ることができませんでした。
何より、ワインを多く飲む人で、レスヴェラトロールの濃度が高いという人に限っても、発病リスクが変化ありませんでした。つまり赤ワインの摂取との因果関係がなかったのです。
これにより、赤ワインを飲むことと、炎症マーカー、循環器系の病気、ガン、死亡率一般との間には、いかなる相関関係も存在しないとの結論に至ったのでした。
ということは、フレンチパラドックスの原因とは何でしょうか?
分かりません。
もしワインとの関係で語るなら、毎日飲むワインの味が、その日のストレスを軽減させ、その幸福感が身体に好影響を与えている? とでもいうしかないかもしれません。
医学的でありませんが、ワインに医学的効能を求めることにそもそも無理がある気がします。嗜好品で十分ではないでしょうか。
だからこそ、プレゼントとしても価値があるのだと考えますが、いかがでしょうか?