ボルドーワインはフランスAOCワインの約三分の一のシェアを占めるほど巨大な生産量を誇ります。その知名度は、世界中のどの産地であっても勝負にならず、ワイン愛好家はもちろんライトユーザーでさえもが高級ワインの代名詞として注目し、プリムールではどんなに高額な値が付こうとも世界中のバイヤーは買いを入れ、格付けワインやそれと同等レベルのグラン・ヴァンはアッという間に売り切れます。
それはひとえに、”ブランド戦略”によりこれほど商業的大成功を収めているワインは他にはないからです。生産者=ブランドという解りやすさ、ステイタスをあおる格付け制度、ボルドーと双璧をなすブルゴーニュであってもマーケットシェアとなれば比較になりません。
シャトーや元請けネゴシアンなどの多くは貴族。潤沢な資金力に強力な政治力。またおよそワイン造りとはかけ離れたビジネススーツに身を包んだMBAホルダーがマーケティングを担当。そしてもちろん世界最高レベルのクオリティで広く一般に成功し、またコアな愛好家をも唸らせるワインがボルドーなのです。
ボルドーワインはどっしりとした濃厚な味わいといわれます。カベルネ・ソーヴィニヨンをベースに数種をアッサンブラージュして造られるワインで、大規模生産者が多く、醸造設備や技術の近代化が進み、それが品質向上や収穫年に左右されにくい安定したワイン造りに寄与しています。まさに伝統技術と近代技術のハーモニーです。
さて、先にボルドーワインは「どっしりとした濃厚な味わい」と記述しましたが、実はボルドーの共通スタイルとして確立された特徴はこれとは相反するものです。
他の産地で造られる同種のセパージュでは決して再現できないスタイルを備えています。
それは「清涼感」です。
ボルドーワインは決して重たくありません。低級から高級キュヴェに至るすべてに共通するスタイルとして、爽やかなフィネス(洗練さ)があり、いずれのワインもスルスルと飲み干すことができるのです。
この特徴は他の産地で造られる同種のセパージュには欠けている要素です。この銘醸地にのみ与えられたテロワールであり、それは数え切れない多くの要素が「良質なブドウが育つ」というただ一点にのみ見事にシナジーするという奇跡といえます。
ミクロでは土壌や微生物。マクロ的には、どこにどのような高さや形の山があり、丘があり平原があり、どのような川があり、風がどの方向から吹き付けるなどの地形、また風の強度や温度、そして雨量や日照量に日当たりの角度、気温に湿度といった気候。ミクロ的にもマクロ的にも最高のブドウを育て上げるために、いくつもの要素が奇跡的に合致した銘醸地がボルドーなのです。
それゆえ世界中から醸造家がこの地を訪れ、栽培から醸造技術、ブドウ苗を持ち帰って自社畑で育てたりと、あらゆる施策にチャレンジしますが、真のボルドースタイルの再現には至りません。
個人により趣味嗜好は異なりますが、好む好まざるに関わらず、ワインの王道には間違いなくボルドーワインが存在します。
国際市場において最も人気を誇るカベルネ・ソーヴィニヨンの故郷といわれ、ストーリーテラーとして愛好家を引きずり込む、興味深くも華麗な歴史を持つ銘醸地が他にあるでしょうか。それは各時代の要人をも登場人物として内包するほど壮大なスケールを持つのです。そして品質基準として世界中の多くの醸造家が目標とする事実がある以上、同種のセパージュ(カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロを主体とする)におけるワインの頂点に君臨することに反論の余地はありません。
もちろん人気品種であるカベルネ・ソーヴィニヨンの銘醸地は世界中に存在し、特に台頭目覚ましい新世界の活躍に疑問の余地はありませんが、カリフォリニアのカルトワインがどれほどの高価なプライスで落札されようとも、真のプレスティージュ性においてボルドーワインを超えるにはまだまだ至っておりません。
ワインの世界観を深めようとするならば、"まずは"ボルドーを学び王道を知ることが、偏った主観や独断を避けるためにも理想的といえるでしょう。
二大銘醸地 - ボルドーワイン
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